生地の地直しについて・・・FAQ集

本番生地の地直しについて

洋裁の本を見ると最初に「地直しをしましょう」と書いてあります。
これはゆがんでいる生地の地の目を直す作業のことです。
ニット生地の場合の「水通し」という作業は地直しの効果もあるのですが
生地の縮みを人為的に起こす作業でもあります。


<どうして生地はゆがんでいるのか?>
不織布は除き、布帛もニットも地の目があります。
生地を織る(または編む)機械で仕上がった瞬間の生地というのは、正しい地の目をしています。
でも生地の長さは物によりますが100Mどころか1KMなどあり、生地を広げたままの状態では運べませんから
生地を約30〜50M単位にカットして巻いた状態にします。これを原反(げんたん)と言います。
この原反にするときの巻きつけ作業のときに、生地のゆがみが発生します。

例えば「鉛筆に紙を巻きつける」作業をすると、なかなか両端が揃わなかったり
ブカブカと浮いた感じになったりするのを経験したことは無いでしょうか?
原反にするときにも同じ現象が起きていて、どうしても生地のゆがみが出てしまうのです。


<生地の耳は使いません>
特殊な場合を除いて地の耳は使いません。(生地の耳とは生地の幅に対して両端部分のこと)
地直しをする前に耳の部分を裁ち落とすか、斜めにはさみでチョンチョンと切り込みを入れます。
こうすることにより地直しの作業が楽になります。
耳の部分を処理してから地直しをすると、ゆがみが生地の外に逃げるためです。


<布帛の地直し>
生地によって適温があり、その温度でスチームアイロンを掛けるのが基本ですが
生地によってはスチームアイロンができないものもあるので
何でもかんでもスチームをかければいいというものではありません。

布帛のスチーム可の生地の場合
「霧吹き」をアイロンとは別に用意します。細かい霧が出るもののほうがお勧めです。
霧吹きを万遍なく生地にかけて、縦地の目と横地の目が垂直に交わるように
生地を軽くひっぱりながらアイロンをかけます。
スーツなどを作るような生地の場合は、直接アイロンをかけると「テカリ」が出るものもあるので
そういう場合は霧吹きをかけてから当て布をしてアイロンをかけます。

布帛のスチーム不可の生地の場合
繊細な生地が多いので、ドライアイロンで優しく地の目を整えます。必要ならば当て布をする。


<ニットの水通し>
ニットの場合は布帛よりも生地のゆがみが多いことが多く、また布帛の地直しのように
生地を引っ張るというのは無理なので水に漬けます。
ただし、洗濯表示が「クリーニング限定」のものは水に漬けてはいけません。

ニットの水通し可の生地
漬ける時間は生地によって変わってきますが、一般的には30〜60分程度。
綿は縮みが多く出るものなので長めにします。
作った洋服を家庭で洗濯する予定の場合はしっかりとした水通しが必要になってきます。
また、お風呂の残り湯で洗濯することが多い場合は特に注意が必要で
水で洗うよりも縮みが多くなりますから、水通しのときも冷水ではなく少しだけぬるま湯にしておきます。
毛の場合は物によります。一般的なウールジャージの場合はふわっとスチームアイロンをかけますが
ドライクリーニングが望ましい風合いのものにはドライアイロンを。

ニットの水通し不可の生地
絹、化合繊はドライアイロンで地直しします。その他、風合いによって。


<プリント生地に注意>
全てのプリント生地ではありませんが、生地メーカーの在庫の無地生地の上にプリントし
新しい生地として加工し直す場合があります。こういった生地の場合は
無地生地を作った後に一度巻きつけ作業をしてあるために生地にゆがみが出ていて
その上にプリントをしてあるので、地直しすると逆に柄がゆがむことがあります。
こればかりはどうにもなりませんから、生地を買うときに多く買っておく必要があります。
普通のプリント生地というのは、巻きつけ作業をする前にプリントするので、地直しをすれば柄も正しくなります。


<ポリウレタン混に注意>
ポリウレタンとは伸びる生地に使われている繊維で、ゴムのような性質を持っています。
「何の素材に対して」や「どういう生地の編み方or織り方」という限定は出来ないのですが
稀に、ポリウレタンが入っている生地にスチームを掛けるとものすごく縮むことがあります。
出来れば水通しをしてから使ったほうが良いと思います。


<生地の産地>
一般に売られている生地というのは、イタリアなどでしたら言葉の響きがいいから書いてありますが
どこの国で作られたものなのかがわからないものが多いです。

日本で作られている生地というのは検査がとても厳しいためとても優秀で、
生地のゆがみも少なく、色落ちも少なく、極端な縮みも起きません。
地直しする場合もとても楽です。

海外の生地は見た目と風合いが重視されている場合が多く、ゆがみ、色落ち、縮みには注意が必要です。
地直しに苦労するものの多くが外国産です。(外国産でもいい生地はあります。念のため。)


<工場の残反>
工場から出た残反なども売られています。
アパレルメーカーで使われている生地というのは、工場に入る前に「生地整理」がされています。
つまり地直しが完了していることが多いのです。
縫製工場でも地直しはしますが、軽くさらっとかけてしわを取る程度です。

ただしニットの場合は上でも書きましたが、自分がどうやって洗濯するか?が後で影響するので
必要な生地には必ず水通しをしてください。


<どうして地直しが必要なのか?>
地の目がゆがんだまま洋服を作っても段々と正しい地の目に戻ろうとします。
安いTシャツを買って何度か洗濯していたら、身頃がねじれた経験は無いでしょうか?
そのTシャツの地の目を見ると、ねじれた状態で縦地の目が通っています。

普通は身頃の上下に対して地の目を縦に通します。
これは布帛を考えるとわかりやすく、生地工場で生地を作るときに、
縦糸をまっすぐピンと張り、そこに横糸を織っていくため縦糸のほうが安定しています。
また糸の一本一本にも重力がかかるので、縦糸はまっすぐに垂直になりたがるのが自然なのです。
ですから洋服を作る前に地の目を正しくしてあげると、洋服のシルエットもきれいになります。



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