ロックミシンで上手に使うには。上達する練習方法について・・・FAQ集

ロックミシンが苦手?

洋裁をこれから始める方で、最初からロックミシンを買う人は少ないと思います。
すでに直線ミシンを使っていて「端かがりを本格的にしたい」や「ニット生地を縫いたい」
そのような理由でロックミシンを持つのではないかと思います。

質問ではないですが、よく頂いたメールで拝見するのが、
「ロックミシンを買ったのですが、なかなか上手に使えないでいます」という文章です。

返信で簡単に練習方法を添えておりますが、今回はそんなお話をもう少し詳しく書いてみたいと思います。


<<ロックミシンは難しい?>>
直線ミシンを使う場合で苦労するのは何かを考えると、
「糸調子合わせ」と「バイヤス断ちなどの伸びる部分を縫う時」ではないでしょうか。

生地によっては自分で微調整が必要ですが、基本的には自動差動調整があるロックミシンはこれらを自動的に調整してくれます。
人間がすることはひとつだけ、正確に生地をミシンへ送り込むだけです。

正確に送り込むためには、ロックミシンの速度に慣れること。ロックミシンのコツはこれだけです。
本当はロックミシンは難しくないのです。あまり苦手意識を持ち過ぎないことも大切です。



<<馬力と速度の違い>>
普段使っている直線ミシンが職業用や工業用の場合はあまり気にならないと思いますが、
ロックミシンは直線ミシンよりも馬力が強いものが多く、「フットコントローラー」が付いているものが多いです。

普及品の(安価な)家庭用直線ミシンを使っている場合は、まずはロックミシンの馬力に慣れなくてはなりません。
フットコントローラーは足での踏み込みで速度を調整するものですから、
「どれくらい踏み込んだら、どれくらいの速度で縫えるか」をまず体で覚える必要があります。
普段、手元で速度を調整できる直線ミシンを使っている人は、特にこの感覚を知ることが大切です。



<<ロックミシンの練習に使う生地>>
要らない布帛を用意します。洋服を作った時の残布で十分です。
直線ミシンで縫う場合に「縫いやすい」と感じるような生地がいいでしょう。

薄い布帛(ブラウスに使う程度の厚さ)の場合は、生地を二枚重ねにします。
中肉布帛(スカートやパンツなどに使う程度の厚さ)の場合は、生地を一重で使います。



<<練習時のロックミシンの設定>>
1.メス(刃)を下ろします。

2.押え金の下に少しだけ生地を挟んで、押え金を下ろします。

3.生地には手を触れずに、フットコントローラーを軽く踏んでみます。

生地が進んで行き、ロックミシン目でかがられます。
手で生地を触っていなくても、生地は勝手に送り込まれることをまず知りましょう。



<<ロックミシンで縫う練習手順>>
1.フットコントローラーの踏み込みを変えて、速度を変える練習。
思い切り踏むとどんな速度になる?ゆっくり縫うにはどれくらいの踏み込みになる?
生地は勝手に送られますから、足に神経を集中させます。
自分が好きな(扱いやすい)速度を見つけましょう。

2.メスでカットする巾を均等にする練習。
最初は直線で練習します。「3ミリカット」と「5ミリカット」を練習しておけば大抵のデザインを縫うことができます。

3.手を添えて「曲線にロックミシンを掛ける」練習。
この練習をするときは中肉生地一重のほうがやりやすいでしょう。
適当にカーブになるように生地を送り、カーブにかがっていきます。
直線とは違い気をつけないと、思い描くカーブにはならないはずです。
カーブをかがる時は、「どれくらいのカーブだとどれくらいの速度がいいか」を知る練習です。

4.持っている型紙の袖ぐりや袖山などを練習用の生地に写して、より実践的な練習。
決まった曲線になるように縫い進めるには、より速度調整が必要であることを実感するはずです。
メスで曲線をカットする幅を均等にする練習にもなります。

5.ここまで出来るようになったら「ニット生地」でも同じ練習をします。



<<もうワンランク上への練習>>
・「メス有」と「メス無」では生地を置く場所が少し変わります。その差を知ることも大切です。
・薄手生地の一重をロックミシンするのは難しくなります。
・巻きロックもレベルが高い作業です。
・生地の厚さによっては糸調子を変えたほうが良い場合があります。
・その他、ロックミシンには色々な縫い目を作ることができる機種がありますから、
使ってみたい機能は事前に練習しておきましょう。




<<コラム:なぜこんな練習をするのか?>>お時間がある方だけお読みください。

ロックミシンに変わった途端に難しく感じる人というのは、直線ミシンでも苦労する場面があるはずです。
実は、直線ミシンで大抵の生地を縫える人は、ロックミシンも問題なく使えるものなのです。

これは私自身の経験談です。
私が始めてロックミシンに触れたのは学生時代です。
直線ミシンでは「とりあえず縫える」レベルではありましたが、
まだまだ洋裁初心者だった私は、ロックミシンのメスを使うと縫い代巾が不均等になることがありました。
かがり目が綺麗になるから好きだけど、どちらかと言うとロックミシンは苦手でした。

それからアパレル会社に入り、トワルチェック用の仮縫いをたくさん縫う時代がありました。
先輩後輩には関係なく、パタンナー全員が自分担当のトワルを縫わなくてはなりませんでした。
トワルは直線ミシンで縫いますが、本番生地を使って縫うことも多く、
気づいたら、「伸びる生地」でも「てろんとした生地」でも大抵の生地が縫えるようになっていました。

ずっと後になって、ロックミシンを買って使うことになりましたが、
「なぜ、学生時代は苦労したのだろう?」と思うほど、すんなり最初からロックミシンを使うことができたのです。


自動差動送り機能があるロックミシンを使うと、糸調子の調整がほとんど不要で縫うことができます。
残りのコツは「いかに正確に生地を送り込むか?」だけなのに気づきました。

生地を送り込むというのは直線ミシンでもすることです。
直線ミシンで出来ていれば、同じようにロックミシンでも出来るのです。
逆にロックミシンだと出来ない場合は、直線ミシンを使っている時に無理があることを表しています。

私はたくさんのトワル縫製で必然的に訓練されましたが(年間約100着)、
普通の人はこんなにたくさん縫いませんから、「ゆっくりでも正確に縫う」練習をするのが一番になります。

早く縫う必要はありません。
「綺麗に縫い上がった服」と「あまり綺麗に縫えていない服」のどちらを着たいかを考えればわかることです。
正確に縫えることは綺麗に仕上がることに繋がります。
ゆっくでも正確に縫うことが大切であることを、忘れないでくださいね。
ロックミシンも直線ミシンも上達のコツは同じです。



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