ニット生地を縫うときの糸について・・・FAQ集
ニット生地を縫う時の糸はどんな糸を使うのですか? |
特に、布帛から洋裁に入った人が悩むのがニットを縫うときに使用する糸だと思います。
これは生地や用途によって変わります。もちろん針は「ニット専用針」を使用します。
【ニット素材に使う糸の種類について】
大まかに3種類の糸を使い分けます。
糸の名前 | 材 質 | 糸の特徴 | 使う用途 |
ナイロン糸 (レジロン、レオナ66など) |
ナイロン100% | ちょっと伸びる | 直線縫い部分 |
ウーリー糸 | ナイロン100% | とっても伸びる | ロックミシン (針糸、またはルーパー糸) |
スパン糸 | ポリエステル100% | 伸びない | ロックミシン (針糸、またはルーパー糸) |
【4本ロックミシンに使う組み合わせ】
わかりやすいように組み合わせ実験をしました。
どの糸をどこに使うかで縫い目の伸びが変わるのを参考にしてみてください。
*生地は10センチ角に裁断し、2枚重ねで4本ロック。
*一辺の中央に5センチの巾をとり、5センチが何センチまで伸びるかの実験。
*縫う前は5センチが10.5センチまで伸びる生地を使用。
*伸び具合は思いっきり引っ張っての最大値。
:::使用糸::: ナイロン糸(紺色、赤色) ウーリー糸(ベージュ) スパン糸(黒) |
ウーリー糸のみ またはナイロン糸の組み合わせ |
スパン糸のみ またはナイロン糸の組み合わせ |
【実験結果】
伸び具合は生地や糸調子でも変わりますので、順位を参考に見てください。
組み合わせ | 目 的 | 伸び具合 | 5cmの縫い目を 伸ばした時 |
倍率 |
ウーリー糸4本 | とにかく生地と一緒に伸びて欲しい場合 縫い目が伸びないと絶対着られない場合 |
高 | 9.8センチ | 約2倍 |
ナイロン糸1本 ウーリー糸3本 |
伸びて欲しいけれど、ウーリー糸の色が無い場合 強度が少し欲しいとき。左針糸にナイロン糸を使用 |
↑ | 9.8センチ | 約2倍 |
ナイロン糸2本 ウーリー糸2本 |
ほど良く伸びて、縫い目をしっかりしたいとき 左針糸と右針糸にナイロン糸を使用 |
↑ | 9.5センチ | 1.9倍 |
ナイロン糸2本 スパン糸2本 |
適度な伸びが欲しいとき、ウーリー糸が無い場合 左針糸と右針糸にナイロン糸使用 |
↓ | 9.0センチ | 1.8倍 |
ナイロン糸1本 スパン糸3本 |
少しの伸びでいい場合 左針糸にナイロン糸を使用 |
↓ | 8.5センチ | 1.7倍 |
スパン糸4本 | 伸びる分を考える必要があまり無い場合 | 低 | 8.0センチ | 1.6倍 |
【無難なのはどれ?】
縫い目がどれくらい伸びて欲しいかで決めます。
上の表で赤い文字にしてある組み合わせが無難と言えますが、
よくわからない時は「ナイロン糸2本、ウーリー糸2本」にしておくといいでしょう。
縫い目の伸びをそんなに必要としないデザインの場合はスパン糸4本でも構いません。
スパン糸4本でも縫い目は少し伸びます。
また、ナイロン糸1本+スパン糸3本はあまりやらないのですが、スパン糸4本よりは若干伸びますし、
ステッチがあるデザインの場合はステッチ糸と縫い糸(左針の糸)を揃えたほうが、
見た目が気持ちいいのもあります。
【どの組み合わせがいいの?】
生地と作る洋服のシルエットで変えます。
例えば、カジュアルなダボッとしたTシャツの場合は、
特に「どこかが伸びないと着られない」or「伸びないと動けない」ということはありませんよね?
そういう場合は伸び具合が高くなくても問題ありません。スパン糸4本で十分です。
見るからに「衿ぐりが小さい」or「裾巾が狭い」or「狭い身幅で切替線がある」というシルエットの場合は、
どう考えても生地が伸びないと着られないですし、縫い目も伸びないと着られません。
どれくらい伸びて欲しいのかな?を考えると、糸の組み合わせも自然と見えてきます。
微妙な糸調子でも変わってくるので実際に試し縫いをして体験してみてください。
【直線ミシンでニットを縫う場合】
ニットは4本ロックで縫うのが基本ですが、
ステッチを入れる場合や直線ミシンに伸びる生地用の設定がある場合。
組み合わせ | 目 的 | 伸び具合 |
上糸:ナイロン糸 下糸:ウーリー糸 |
縫い目が伸びて欲しいとき 伸びないと着れなさそうな時 |
やや高 |
上糸:ナイロン糸 下糸:ナイロン糸 |
生地に馴染む程度に やや縫い目が伸びて欲しいとき |
中 |
*直線ミシンの場合はスパン糸は使えません。糸が切れてしまいます。
*ウーリー糸はナイロン糸のような小さな巻きサイズはありませんので、
直線ミシンの後にロックミシンを起き、ロックミシンにウーリー糸をセットして、
直線ミシンまで糸を引っ張って下糸を巻くと巻きやすいです。
*直線ミシンで縫う場合の針目は、布帛の場合よりも少し粗め(大きく)します。
【アパレル製品はスパン糸4本?】
アパレル製品はスパン糸4本で縫ってあるものが多いのは事実です。
でも「これは伸びないと着られないぞ!」というものには、レジロンやウーリー糸も使われています。
自分が持っている色々なカットソーをひっくり返して、糸を見てみるもの参考になります。
【4本ロックでニットを縫うのは弱そうなんですが。強度は大丈夫?】
まず、ウーリー糸だけではなくてナイロン糸を入れると丈夫になります。
次にロックミシンの糸調子をしっかり調整してください。
特に左針に来る糸は、縫い代を割ったときに糸がはしご状態にならないようにします。
自動差動送りがある場合でも、ミシンによっては左針の糸調子が弱いものがあるので、
ほんの少しだけ糸調子を強くする感じで調整し直します。(強くし過ぎてはダメです。伸びなくなります。)
「使う糸」と「糸調子」の2つを気をつければ、綺麗に丈夫に縫いあがります。
【ニット専用の針は何が違う?】
針先をよく見ると丸まっています。鋭く尖っていません。
これはニット素材は繊細なものが多く、針先が尖っていると糸を切ってしまうことがあるためです。
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